【トップ100・チャート】今週のピックアップ(03/23付)、The Weeknd / Moment Joon / Jay Electronica / Dos Monos

毎日更新されるTYPICAオリジナル楽曲チャート。チャートにランクインされた楽曲のなかから、特に注目の楽曲をまとめてピックアップします。



The Weeknd / In Your Eyes

カナダ・トロント出身のシンガーソングライター / プロデューサー、The Weeknd(ザ・ウィークエンド)。03/20(Fri)にリリースされた待望のニュー・アルバム『After Hours』の収録曲が、チャートにランクインされました。

オリジナル・アルバムとしては、2016年にリリースされた3rdアルバム『Starboy』以来となる、およそ3年4ヶ月ぶりの新作に。2018年11月にトロントで行なったライブで「第6章(新作)はもうすぐだよ」とアナウンスしており、多くのリスナーのあいだで、これまで公開してきた1枚のコンピレーション・アルバム『Trilogy』(2012年)、3枚のアルバム『Kiss Land』(2013年)『Beauty Behind the Madness』(2015年)『Starboy』(2016年)、1枚のEP『My Dear Melancholy』(2018年)に次ぐ、6番目の「章」としての新作リリースが期待されていました(当初は、アルバム・タイトル「Chapter VI」と予想されていた)。

およそ1年後、2019年11年にメルセデスベンツのテレビCMタイアップとしてリード・シングル「Blinding Lights」を発表し、数日後に「Beats 1」ラジオ番組内で、2曲目のリード・シングル「Heartless」をリリース。それぞれのMVのほか、アルバムのリリース直前に公開されたショートフィルムも話題になるなど、世界的な注目を集めています。

本ニュー・アルバム『After Hours』のタイトルについて、マーティン・スコセッシ監督作「アフター・アワーズ」(1985年)からインスピレーションを受けたとされているほか、アルバム・アートワークやMVには、おなじくマーティン・スコセッシ監督作「カジノ」(1995年)、テリー・ギリアム監督作「ラスベガスをやっつけろ」(1999年)、トッド・フィリップス監督作「ジョーカー」(2019年)に加えて、The Weeknd(ザ・ウィーケンド)自身がカメオ出演したことでも知られる、アダム・サンドラー主演作「アンカット・ダイヤモンド」(2019年)からの影響が、多くのリスナーから指摘されています。

またクレジットには、DaHeala(ダヒーラ)、Dre Moon(ドレー・ムーン)、Frank Dukes(フランク・デュークス)、Kevin Parker(ケヴィン・パーカー)、Max Martin(マックス・マーティン)、Metro Boomin(メトロ・ブーミン)、Oneohtrix Point Never(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)、Oscar Holter(オスカー・ホルター)を含む多くのプロデューサーが参加する一方、ゲスト・アーティストをいっさい呼ばず、The Weeknd(ザ・ウィーケンド)が全面ボーカルをとっています。そして、今後にかけて多くのMV公開が控えていることをツイートしており、引き続き注目が集まります。



Moment Joon / TENO HIRA

韓国・ソウル出身、大阪を拠点に活動しているラッパー、Moment Joon。03/13(Fri)にリリースされた注目のニュー・アルバム『Passport & Garcon』の収録曲が、チャートにランクインされました。

小学生時代にLAで約1年ほど過ごしていた当時からリリックを書き始め、Zeebra『The New Beginning』(2006年)を筆頭とする多くの日本語ラップを愛聴し、高校で日本語を専攻していた影響で、徐々に日本語のリリックを書き始めるように。2010年からの大阪大学への留学を機にラッパーとしての活動が本格化し、2011年にミックステープ『Joon Is Not My Name』をフリー公開。2012年から韓国の徴兵制度によって入隊するも、その直前に2本のミックステープ『Season Of Love』『Season Of Fever』などを公開。早期除隊後の2014年には、Big Sean(ビッグ・ショーン)「Control (feat. Kendrick Lamar & Jay Electronica)」をビートジャックした楽曲「Fight Club (Control Remix)」に加えて、2枚のミックステープ『The Game Waits Me Vol.1』『The Game Waits Me Vol.2』などを発表しました。

1人の移民者ラッパーとして、日本の生活で日々感じる違和感をリリックに込めた楽曲リリースや、MCバトル、客演参加などを多方面で続けるなか、創刊以来86年ぶりの3刷を記録した「文藝」(2019年秋季号)の特集「韓国・フェミニズム・日本」に自伝的小説「三代 兵役、逃亡、夢」が掲載されるなど、多くの注目を集めています。

「Passport(=移民者としての自分)」と「Garçon(=少年としての自分)」をテーマとした本ニュー・アルバム『Passport & Garcon』は、多くの偏見や人種差別にさらされる現実を告白しながら、移民者ラッパーとして内側から日本を変えていこうとする意志を宣言。ビザの申請却下を受けて韓国に出国した前作『Immigration EP』を経て、関西国際空港の入国審査官とのスキットが挿入されたオープナー・トラック「KIX / Limo」では「移民」ではなく「外国人」として扱われてしまうことの不安定さを描写。

韓国人に向けられる偏見をストレートに演じることで人種差別を皮肉った「KIMUCHI DE BINTA」や、先祖の時代から多く移民で成り立つ日本でマイノリティのルーツが平等に扱われる未来を訴えた「Home / CHON」。後半にかけて、日本のヒップホップ・シーンで外国人扱いされてしまう絶望と虚無を「Losing My Love」で吐露し、現実逃避の果てに鏡のなかの自分自身(少年)と向き合う「Garcon In The Mirror」を経て「TENO HIRA」で再びマイクを掴みステージに立つ、Moment Joon。日本に来て約10年澁谷忠臣によるアートワークや多くの客演引用を用いながら、社会と人間に真正面から焦点を当て続けたコンシャスなアルバムとなっています。ぜひ一聴を。



Jay Electronica / The Blinding feat. Travis Scott

米ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のラッパー / プロデューサー・Jay Electronica(ジェイ・エレクトロニカ)。03/13(Fri)にリリースされた約10年越しのデビュー・アルバム『A Written Testimony』の収録曲が、チャートにランクインされました。

LL Cool J(LL・クール・J)の影響でラッパーを始め、2007年に公開したミックステープ『Act I: Eternal Sunshine (The Pledge)』や、2009年にリリースした2枚のシングル「Exhibit A (Transformations)」「Exhibit C」で大きな注目を集めた、Jay Electronica(ジェイ・エレクトロニカ)。レーベル争奪戦の末、2010年にJay-Z(ジェイ・Z)率いるレーベル〈Roc Nation〉と契約するも、一向にアルバムがリリースされないことから「永遠の新人」と呼ばれるように。その間、Erykah Badu(エリカ・バドゥ)との5年間の交際で一人娘をもうけるも破局し、ヨーロッパのユダヤ系財閥「ロスチャイルド家」のKate Rothschild(ケイト・ロスチャイルド)との交際も話題となるものの、2013年にリリースされた、Big Sean(ビッグ・ショーン)「Control (feat. Kendrick Lamar & Jay Electronica)」を筆頭に、多くの客演やプロデュース・ワークを展開。

2011年2014年ごろにアルバム・リリースを宣言しては、インタビューを通じて「アルバムは間違ったコンセプト」「何かを作って時間が過ぎると、趣向/スキルが変わっているのでそれに満足できなくなるからまた変えるんだ。それに時間制限をかけることはできない」といったコメントを残しており、長年にわたって半ば諦めていた多くのファンにとって、突然のサプライズ・リリースとなりました。

2019年12月から約40日間かけてレコーディングされたという本デビュー・アルバム『A Written Testimony』には、2010年に公開していた楽曲「Ghost of Soulja Slim」を筆頭に、Jay-Z(ジェイ・Z)が全10曲中8曲に参加。クレジットとして、James Blake(ジェイムス・ブレイク)、The-Dream(ザ・ドリーム)、Travis Scott(トラヴィス・スコット)をフィーチャーし、The Alchemist(アルケミスト)、Hit-Boy(ヒット・ボーイ)、Khruangbin(クルアンビン)、No I.D.(ノー・アイディー)、Swizz Beatz(スウィズ・ビーツ)などがプロデュースを手がけている模様です。

ジャケット・アートワークは、Beyoncé(ビヨンセ)が撮影した自身のプライベート・プールの写真が使用されており、アルバム・タイトルやトラックリストにアラビア語が使われているのは、かつてアフリカ系アメリカ人のイスラム運動組織「ネーション・オブ・イスラム」に入信し「ファイブ・パーセンターズ」の思想に感銘を受けていた背景が推察されます。さまざまなトピックが各収録曲で語られており、未聴のリスナーはぜひチェックを。



Dos Monos / Rojo

荘子it、TAITAN MAN、没、からなるヒップホップ・ユニット、Dos Monos。03/13(Fri)にリリースされた注目のニュー・シングルが、チャートにランクインされました。

中高時代からの同級生3人で構成され、各々のバンド活動を経て、2015年に当時トラック制作をしていた荘子itの呼びかけにより結成した、Dos Monos。2017年に韓国・ソウルで初の海外ライブを行ない、同年には「SUMMER SONIC 2017」に出演。2018年に米レーベル〈Deathbomb Arc〉とサインし、2019年にリリースした1stアルバム『Dos City』が国内外で話題に。また、ロンドン出身のバンド・black midi(ブラック・ミディ)との「bmbmbm (Dos Monos remix)」を手がけ、雨のパレードとのコラボ・シングル「惑星STRaNdING (ft.Dos Monos)」を公開するほか、渋谷の泥酔者を撮り続ける謎のSNSアカウント「@SHIBUYAMELTD0WN」によるコンピレーション・アルバム『SHIBUYAMELTDOWN』に参加するなど、さまざまな活動が続いています。

本ニュー・シングル「Rojo」のタイトルについて、荘子itのコメントによれば、共産革命を象徴する色であり、スペイン語で「赤」を意味する「Rojo(ロホ)」が由来。さらに「現在、コロナウィルスによる非常事態に伴い、奇しくも、望まぬ“籠城”を強いられた全てのアーティスト達へ。イデオロギーを超えた、秘められた革命の希望をレペゼンしてこの曲を発表します。革命を志す者にとって、平常時こそ非常事態だったはずです。我々にとって、Rojoの正しい読みは、“朗報”です。」(一部抜粋)と述べており、逼迫する現状に訴えかける楽曲となっています。

そして先日、1stアルバム『Dos City』のリリース1周年を記念して、収録曲「スキゾインディアン」のMVを公開。さらに今春には、ニュー・アルバムのリリースが予定されているとのことで、引き続き期待が高まります。


以上、今週のピックアップでした。

Text by Ishikawa Takato

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