【トップ100・チャート】今週のピックアップ(06/07付)、Run The Jewels / KID FRESINO, カネコアヤノ / Terrace Martin / Kroi

毎日更新されるTYPICAオリジナル楽曲チャート。チャートにランクインされた楽曲のなかから、特に注目の楽曲をまとめてピックアップします。



Run The Jewels / JU$T (feat. Pharrell Williams & Zack de la Rocha)

Killer Mike(キラー・マイク)、El-P(エル・P)によるスーパー・デュオ Run The Jewels(ラン・ザ・ジュエルズ)。予定より2日前倒しである、06/03(Wed)にサプライズ・リリースされたニュー・アルバム『Run The Jewels 4』の収録曲が、チャートにランクインされました。

オリジナル・アルバムとしては、2016年12月にリリースされた『Run the Jewels 3』以来となる、およそ3年半ぶりの新作に。予定より2日前倒しでリリースされた背景には、05/25(Mon)に発生した黒人差別にまつわる2つの事件を発端に、長年続く構造的な人種主義の撤廃を訴える抗議活動「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター / 黒人の命も大切 )」が再燃していることを受けて公開されました。

1つ目の事件は、午前中のニューヨークのセントラルパークでリードを繋がず犬を散歩させていた白人女性のエイミー・クーパー氏が、自身に注意を促したアフリカ系アメリカ人のクリスチャン・クーパー氏(同性ではあるが他人)を「黒人男性に脅かされた」として警察に通報したこと。もう1つの事件は、米ミネアポリス近郊でアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイド氏が偽札の使用容疑をかけられた際、白人警官のデレク・ショーヴァンが頸部に膝を(8分46秒)押さえ続け、無抵抗のフロイド氏を窒息死させた事件であり、どちらの模様もSNSを通じて広く拡散され、全米各地にとどまらず欧米各国でも大規模な抗議活動が続いています。

今回のリリースについて「ふざけるな、もう待てない。世界はデタラメばかりだ。だから、それらに取り組むときに聴くべき、生々しいものを送るよ。」(一部抜粋)とコメントを寄せている、本ニュー・アルバム『Run The Jewels 4』。ゲストとして、Greg Nice(グレッグ・ナイス)、DJ Premier(DJプレミア)、2 Chainz(2チェインズ)、Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)、Zack de la Rocha(ザック・デ・ラ・ロッチャ)、Mavis Staples(メイヴィス・ステイプルズ)や、Queens of the Stone Age(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ)のフロントマン・Josh Homme(ジョシュ・ホーミ)などが参加しており、リード・シングル「Yankee and the Brave (Ep. 4)」「Ooh La La」などを含む全11曲が収録されています。

また前作に続いて、本ニュー・アルバム『Run The Jewels 4』もオフィシャルサイトで無料ダウンロードで公開されていることに加えて、全米法律家ギルド(National Lawyers Guild)による、社会変革を促すムーブメントを法的にサポートする慈善団体・The Mass Defense Committee(MDC)への寄付が薦められており、El-P(エル・P)本人のツイートによれば、リリースから15時間で50,000ドル以上もの寄付金が集まった模様です。

そして、05/29(Fri)にアトランタ市長・Keisha Lance Bottoms(ケイシャ・ランス・ボトムズ)との記者会見で行なったスピーチにて、ジョージ・フロイド氏の死と各地で発生している一部の破壊行動、アトランタが公民権運動の歴史的な中心地であることに触れながら「警官1人が逮捕されればいいのではなく、4人の警官全員が起訴されて、判決を受けてほしい。私たちはお店を燃やしたいのではなく、システムによって体系化された差別が燃やし尽くされることを求めてる。」(一部抜粋)と語っています。未聴のリスナーは、あわせて注目を。



KID FRESINO / Cats & Dogs (feat. カネコアヤノ)

埼玉県出身のラッパー / トラックメイカー / DJ、KID FRESINO。05/29(Fri)にリリースされた注目のニュー・シングルが、チャートにランクインされました。

オリジナルとしては、2018年11月にリリースされたアルバム『ai qing』以来となる、およそ1年半ぶりの新作に。2019年には東名阪ならびに福岡を巡るリリース・ツアーを開催したほか、アルバムに参加したミュージシャンたちを交えたバンドセットで「FUJI ROCK FESTIVAL ’19」への出演や、東京と沖縄でのワンマンライブなども行なっています。さらに、ドラマー・石若駿が中心となって活動しているプロジェクト「Answer to Remember」のデビュー・アルバムに収録されている楽曲「RUN feat. KID FRESINO」や、Daichi Yamamotoのアルバム『Andless』の収録曲「Let It Be feat. Kid Fresino」などにフィーチャーされるなど、さまざまな活動が続いています。

本ニュー・シングル「Cats & Dogs」は、同い年(1993年生まれ)の敬愛するシンガーソングライター・カネコアヤノに楽曲制作を依頼し、およそ1年の歳月をかけて完成させたもの。ゲスト・ミュージシャンとして、自身のバンドセットに参加している、斎藤拓郎(Gt)、石若駿(Dr)、佐藤優介(Key)に加えて、本村拓磨(Ba)を迎えているほか、The Anticipation Illicit Tsuboiがミックス、Randy Merrill(ランディ・メリル)がマスタリングを担当しています。リリックは、KID FRESINOとカネコアヤノが共作詞しているほか、ジャケット・アートワークは、仲野太賀が写真、須山悠里がアート・ディレクションを手がけています。

そしてリリースにあわせて公開されているMVは、2018年のMV「Coincidence」に続いて映像作家・山田智和がディレクションを務めており、新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言発令前の「としまえん」(2020年8月末から段階的に閉鎖予定)を貸し切って撮影されたとのこと。KID FRESINOとカネコアヤノ、ゲスト・ミュージシャンの佐藤と本村を交えた4人で園内を佇んだり満喫する様子なども収められており、あわせてぜひチェックを。



Terrace Martin / Pig Feet (feat. Denzel Curry, Daylyt, Kamasi Washington & G Perico)

米カリフォルニア州ロサンゼルス出身のプロデューサー、Terrace Martin(テラス・マーティン)。06/01(Mon)にリリースされたニュー・シングルが、チャートにランクインされました。

本ニュー・シングル「Pig Feet」は、先述したジョージ・フロイド氏の暴行死事件などを発端に、各地で再燃している抗議活動「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター / 黒人の命も大切 )」の最中、システム化された人種主義に対するプロテスト・ソングとしてリリースされたもの。LAジャズ・シーンを象徴するサックス・プレイヤーである、Kamasi Washington(カマシ・ワシントン)を迎え、曲中のバースには、Denzel Curry(デンゼル・カリー)、Daylyt(デイライト)、G Perico(G・ペリコ)の3人のラッパーが参加しており、今回のリリースについて「誰かが私に尋ねた、どう感じているのか?と。私は、彼らによって傷つき、恐れを知らず、怒り、認識し、そして家族、仲間全員を守るための準備が完全にできていると答えました。」「私は同じように感じている黒人男性と集まって、真実の作品を作りました。」と、Terrace Martin(テラス・マーティン)がコメントしています。

タイトル「Pig Feet」に、警官を侮蔑的に示したスラング「Pig(ブタ)」がつけられているように、アフリカ系アメリカ人に多くの残虐行為を続ける警官への怒りが曲中に込められており、銃声やサイレンなどが随所にサンプリング。なかでも、Denzel Curry(デンゼル・カリー)によるバースの一節には、Dr. Dre(ドクター・ドレ)「Lil’ Ghetto Boy」(1992年)でフィーチャーされている、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)のラインを引用しながら、刑務所ですら殺人行為から黒人を守ってくれない腐敗したシステムであることを告発。2014年には、テーザー銃と催涙スプレーをともなう警官からの暴力によって弟である、Treon Johnson(トレオン・ジョンソン)を亡くしており、差別に直面する当事者の1人としてラップしています。

そしてリリース当日から公開されている2つのMVには、映像冒頭のメッセージ「THE VIDEO TO THIS SONG IS HAPPENING RIGHT OUTSIDE YOUR WINDOW」(この曲のビデオは、あなたの窓の外に広がっている真実である)の通り、全米各地で起こっているさまざまな抗議活動の様子が収録。MVのエンドロールには、警官からの暴力によって亡くなった黒人たちの名前が、無音のまま数分間に渡って表記されています。未聴のリスナーは、あわせて注目を。



Kroi / Bug

東京を拠点に活動しているバンド、Kroi。05/27(Wed)にリリースされた注目のニュー・EP『hub』の収録曲が、チャートにランクインされました。

ヒップホップ、ファンク、ソウル、R&Bなど、あらゆるブラック・ミュージックに影響を受けているという、内田怜央(Vo)、長谷部悠生(Gt)、関将典(Ba)、益田英知(Dr)、千葉大樹(Key)の5人で構成され、2018年2月に結成された、Kroi。バンド名「Kroi(黒い)」には、ルーツであるブラック・ミュージックの「黒」や、あらゆるジャンルの色が混ざったミクスチャーな音楽性としての「黒」などが込められており、結成当初から海外進出を視野に入れた活動が続いています。

結成8ヶ月後にバンド初のシングル「Suck a Lemmon」を配信リリースすると、2019年には約3,900組が応募したオーディション「出れんの!?サマソニ!? 2019」をくぐり抜けて「SUMMER SONIC 2019」へ出場したことも話題に(インタビューによれば、2018年当時もオーディション最終審査まで残ったとのこと)。同年には、1st EP『Polyester』(フィジカル盤)ならびに2ndシングル『Fire Brain』をリリースし、それまでサポート・メンバーとして参加していた千葉が、12月から正式加入したことで現体制に。今年に入って3rdシングル「Network」をリリースし、1st EP『Polyester』も配信開始されるなかで注目のニュー・EP『hub』が公開されました。

本ニュー・EP『hub』には、先行リリースしていたシングル「Network」や、ライブで披露していた「Shincha」を含む全5曲が収録されており、アレンジ、レコーディング、ミックスまでセルフプロデュースで制作した模様。ジャケット・アートワークは、コラージュ作家・ワダミナコが手がけており、CDとストリーミングで異なるデザインが施されています。またリリース直前に、YouTubeでライブ配信されたトークの模様もアーカイブされており、メンバー5人のゆるやかなビデオ通話が約1時間に渡って続いています。

そして現在、バンドのオフィシャルYouTubeチャンネルにて、過去のライブ映像がアーカイブ公開されており、本ニュー・EP『hub』以外の人気曲も複数アップされています。さらに開催が延期されている「RECORD STORE DAY」限定のタイトルとして、バンド初のアナログ盤となる「Fire Brain / Suck a Lemmon」の7インチ・リリースが予定されています。あわせてぜひチェックを。


以上、今週のピックアップでした。

Text by Ishikawa Takato

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